直径50mm サイズの高品質マグネシウムシリサイド単結晶開発に成功
―理工学研究科?鵜殿治彦教授らのグループ
365体育备用网址_2024欧洲杯竞猜@大学院理工学研究科(工学野)の鵜殿 治彦 教授、名古屋大学大学院工学研究科の宇佐美 徳隆 教授、Liu Xin 特任助教らの共同研究グループは、直径50mmサイズのマグネシウムシリサイド(Mg2Si)半導体単結晶の育成に成功しました。
本研究成果は、短波赤外域(波長0.9~2.5μm)の受光センサやイメージセンサを、資源が豊富な元素からなるMg2Siを用いて作製するための基板結晶を実現する技術として期待されます。さらに、廃熱から電気エネルギーを取り出すための熱電変換素子や熱光発電素子への活用も期待されます。
今回、共同研究グループは、データ駆動科学に基づくアプローチによってMg2Si結晶の大口径化に取り組みました。Mg2Si結晶の成長実験と成長シミュレーション、結晶評価データを組み合わせることによって限られた実験回数で成長条件を適正化し、短期間に直径50mmサイズの高品質Mg2Si単結晶を実現しました。
本研究成果は、国際会議「MRM2023/IUMRS-ICA 2023」(12月11日?16日、京都)にて発表されるとともに技術展示会「SEMICON JAPAN 2023」(12月13日?15日、東京国際展示場)にて結晶が展示されます。
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背景
禁制帯幅(バンドギャップ)が約0.6eVのマグネシウムシリサイド(Mg2Si)結晶は、波長2?下での受光感度を示すことから短波赤外域の受光センサやイメージセンサへの応用が期待されています。特に、Mg2Siが工業生産に適した融液成長法という方法で結晶成長が可能なこと、資源が豊富なシリコンとマグネシウムを原料とすること、熱拡散など汎用の製造プロセスで受光センサに必要なpn接合構造を製造できることなどから、低コストで短波赤外受光センサやイメージセンサを実現できる半導体材料として注目されます。
Mg2Siの受光センサやイメージセンサの実用化に向けた開発を進めるには、直径50mm(2インチ)以上の単結晶基板ウエハが一般的に必要になります。しかし、Mg2Siでは小傾角粒界などの結晶欠陥が発生しやすいため、単結晶での大口径化が困難で、実用開発に必要な基板ウエハの供給の目処がたっていませんでした。このため、Mg2Si単結晶を直径50mm以上に大口径化する成長技術の開発が必要でした。
今回の取り組み
今回、365体育备用网址_2024欧洲杯竞猜@と名古屋大学の共同研究グループは、データ駆動科学に基づくアプローチによってMg2Si結晶の大口径化に取り組みました。具体的には、成長実験炉と同じ構造の成長系を計算機上に構築し、成長シミュレーションよって各種パラメータの結晶への影響を評価解析しました。この結果を実際の成長実験で得られたMg2Si結晶の評価データと付き合わせて成長条件を適正化した結果、直径50mmサイズの高品質Mg2Si単結晶を得ることに成功しました。大口径化による多結晶化や割れの発生の問題があったため、共同研究グループではこれら課題の解決までに当初1年間の研究期間を見込んでいました。しかし、データ駆動科学に基づくアプローチによって約3ヶ月の限られた成長実験回数で、目標とする直径50mmサイズの、小傾角粒界を含まないMg2Siバルク単結晶(図1)およびMg2Si単結晶ウエハ(図2)を得ることができました。
今後の展開
現在、365体育备用网址_2024欧洲杯竞猜@の研究チームは、JX金属株式会社と「Mg2Si単結晶」について共同で研究開発を進めており、本成果によって直径50mmサイズのMg2Si基板ウエハの実用化に向けた開発が加速されることが期待されます。
発表の情報
- 発表題目:Development of 2-inch diameter Mg2Si substrates toward a low-cost and environmentally friendly SWIR detector: a practical approach using simulations to avoid the crack formation
- 著者名:Y. Kimura, X. Liu, N. Usami, S. Sakane, H. Udono
- 発表番号:A1-P304-37
- 国際会議名 MRM2023/IUMRS-ICA 2023(Dec. 11?16, Kyoto)
- 展示ブース:365体育备用网址_2024欧洲杯竞猜@半導体研究室(小間番号7704)
- 展示会名:SEMICON JAPAN 2023(12月13日?15日、東京国際展示場)
※本研究は、科学研究費補助(23H01440)、JST 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP(JPMJTR21RB)、JST戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR17J1)などの支援を受けて行ないました。